|
消灯時間はとっくに過ぎたが、余り蒸し暑いのでなかなか寝つかれない。寝返りを打つと隣のI君、M君も矢張り眠れぬのか声をかけた。
「オイ、眠ったのか?」
「こう暑くては眠れやしないよ。皆は寝たらしいけど。」
「障子の所へ涼みに出ないか。」
こうしてI君とM君と私の3人は、そっとウチワを使いながら涼んでいた。そのうち誰からともなく、外のタタキの上に腰を下ろし夜空を眺める。傍らへ女の子が坐ってればグッと快適なんだが。何しろ禁酒、禁欲の合宿生活では望めぬことだ。然しその前日、昼休みに誰かが“森の中に泉あり”と報せた。血気盛んなオノコばかりだからいろいろの情報を集めるのがウマイ奴も居るものだ。
合宿所がお寺なので、風呂は銭湯まで行かねばならない。この銭湯なるものが仲々オツなもので、男女湯の間に板の仕切りはあっても所々に穴があいているので、お互いにナガメル事が出来る仕組みとなっている。然し、塾の軟式庭球部は紳士として自他共に認めているのでノゾイタ者はいなかった………と思う。その銭湯へ行く途中、少し広い通りが左右に走りそれを左に曲がってものの3,4分も行くと、イワユル“泉”の真中に到着するのである。
閑話休題、3人共タタキの上で涼んでいたんだが、それだけでは物足りなく考えている時、脳裏にヒラメイタのは、“森の中に泉あり”である。こういう事の相談は決定するのが早い。絶好のチャンスとばかりウチワはタタキの隅っこに隠して、キャプテンを始め全員に判らぬ様抜け出した。勿論、“許可なき外出は禁ず”であるからバレたらそれこそ大変な目に会うのは必定。胸をとどろかせながらやがて到着。仲々ヨキ泉である。その時I君はパジャマスタイル、M君はパンツ1枚の上に帯なしの浴衣スタイル、私はネマキスタイルとアラレもない姿。それでも泉の中では………カット……
11時過ぎになったので合宿所まで帰ってくると、確かに開けて出た筈の障子が閉まっており、隠しておいたウチワも消えて無くなっている。変だナと思いながらM君が閉まった障子の隙間から中の様子をウカガウと、キャプテンの「オイ、もう11時半だな。」という声がする。そこで慌てたのは3人。
「オイ、バレたぞ。かくかくしかじかだ。」
「どうしよう」
「弱ったナ」
出かける時と違って、アオナにシオの3人は墓の真ん中で蚊の猛襲を受けながらの対策、丁度3人から余り離れていない墓石の陰ではアヴェックらしき2人が、ガサゴソ、ボソボソとやっているんだが今の3人にとってはそれ所の騒ぎじゃない。皆、深刻な顔で黙り込んで頭を抱え込む始末。
3人運命を共にしようと言うI君の提案をM君と私が却下して、最終決定が出された。
I君は来年度の部の必要人物だから退部さすわけにはいかぬので、M君と私が退部覚悟して障子をサッと開けるからI君丈が開けると同時にフトンの中へ滑り込み、M君と私はどうせ覚悟の上だからゆっくり入ろうと言う事になった。然しM君と私もアワヨクバ退部なんかせずに済ませたいという気があるから障子を30分位かかって1人やっとは入れる位開けて、先ずI君をフトンの中へ滑り込ませ、残った2人も寝ている部員の様子を気にしながら無事フトンへ横たわったのである。横になってからも暫くは寝つかれなかったが、泉でのことを考えているうちに何時の間にか夢路へ誘い込まれた。もうかれこれ1時半くらいに時計の針は進んでいた。
さてその翌朝、目が覚めるなり3人ともキャプテンの顔色をウカガッタんだが、昨夜の出来事は何も知らないという様な顔付きだった。これには後日談があるんだが長くなるので止めておく。全くスリルとサスペンスに満ちた合宿ではあった。
× × ×
短かった4年間でしたが、得難い先輩、得難い友を得た私にとっては誠に有意義な4年間でした。此れも軟庭部のお蔭だと感謝しております。学生生活に於いて大事な事は、学問に励むばかりでなく、私のようにヨキ友を得る事だと思っております。後輩諸君も出来る丈その様に努め、同時に私達の時代に成し遂げ得なかった1部昇格を実現し、果ては全日本の覇権をも得られんことを祈っております。
ヒップ ヒップ フレー ケイオウ オウ オウ オウ!
|